2019/05/24
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新技術が生んだ次世代のワイングラス リーデル<パフォーマンス> シリーズ
新技術が生んだ次世代のワイングラス
2018年、「リーデル」から新しいワイングラス〈パフォーマンス〉が登場した。ボウル内面が波打つように輝く、オプティカル効果を持つ画期的なワイングラス。
ワインの風味はどう変わるのか。その謎とグラスの魅力について、「リーデル・ジャパン」代表のウォルフガング・アンギャルと、銀座「おのでらWINE BAR」のソムリエ、福田遼矢氏が語り合った。
光学効果とリーデルの機能性で誕生
アンギャル こちらのお店のセラーに並んだワイン、フランス産が多いようですね。
福田 はい、200種類以上あります。産地はブルゴーニュが最も多いですね。ほか、個人的に好みでもある上質なドイツワインもいくつかストックしています。今年の1月にオープンしたばかりなので、これから内容が変わるかもしれませんが。
アンギャル 会員制のバーということもあり、また場所柄、ワインに詳しいお客さまが多いでしょうね。いろいろグラスを使い分けているそうですが、新製品の〈パフォーマンス〉を使った感想はいかがでしょうか?
福田 薄口で、ステムも細くて、まず外観に魅せられました。オプティカル効果というのか、光学的加工が施されていると聞いたので、飲み口など全体に厚みがあるのかとイメージしていました。ところが、これまで私が使っていた〈リーデル・ヴェリタス〉と同じように薄口で、ステムはスリムなままに少し長くなっているではないですか。手にして、完成度の高さに驚きました。すぐに導入を決めました。
アンギャル 〈パフォーマンス〉の魅力の一つは、光学的な加工が施されているのですが、薄さはキープされているという点です。このシリーズを手掛けたリーデル家11代目当主マキシミリアン・リーデルは「オプティック・インパクト(=光学効果)」と称しますが、グラスを回すと光のゆらめきが感じられます。ボウルの内側にウェーブラインが浮き上がっていますが、これにより加工していない平らな面に比べて表面積が約1.3倍になっています。注いだワインをスワリングすると、表面積の広さから空気と触れる面が大きくなり、香りの立ち上がりや広がりがより効率的になります。
福田 ボウルの外側にはウェーブはなく、どういう技術で作るのかと不思議に思いました。確かにワインの香りの立ち上がりと広がりは、私が知る限り、今までのグラスの中でも一番かもしれませんね。そもそもどんなきっかけで〈パフォーマンス〉を開発したのですか?
アンギャル 実は〈パフォーマンス〉誕生のきっかけになるプロジェクトがありました。それはプレステージ・シャンパーニュで知られる「クリュッグ」との仕事です。メゾンから、『クリュッグ・ロゼ』の香りや味わいを最大限に楽しむために特別なグラスがほしいというリクエストがあり、新しいグラス制作に取り組んだのです。これまでのブルゴーニュ・グラン・クリュタイプのワイングラスではなく、スリムなフルートグラスでもない、その時に作ったのがオプティカル効果を持つ特製グラスでした。
福田 そんな開発秘話があったのですね。
アンギャル はい。ただ、残念ながら『クリュッグ・ロゼ』用のグラスはメゾンの特注品で、販売はしていません。
ワインの個性を響かせる
アンギャル 〈パフォーマンス〉は、「クリュッグ」のために開発されたグラスの設計思想を受け継いではいますが、製品の開発に当たり、細部を一から見直しています。最大の特徴であるオプティック・インパクトの手法は、昔のヴェネチアングラスの製法に由来します。伝統の技を現代の最先端技術でアレンジしたというわけです。マシンメイドながら、引き足のステムは細く長く美しい。全体のバランスを考えて、台座も大きめです。ワークショップを繰り返し、昨年ようやく新ラインナップとして完成しました。現在は6種類あり、年内には『ソーヴィニヨン・ブラン』グラスがお目見えする予定です。
福田 当店はフランスワインをサービスすることが多いので「ボルドータイプ」と「ピノ・ノワールタイプ」をまずそろえました。グラスの高さ、細くて長いステム、そして安定した台座。重心のバランスが良く、運悪くボウルに手が引っかかってしまっても、倒れにくい。先程、グラスを倒しそうになりヒヤリとしましたが、重心が低めなせいか倒れることはなく、おかげで割らずにすみました。(笑)
アンギャル 台座が大きいことで、力学的にも安定しているので、お客さまにとっても使いやすいと思います。業務用の洗浄機にも対応しているので、グラスの洗浄も楽です。見た目に美しく、ワインの風味がより引き立ち、そして取扱も難しくない。
福田 いいこと尽くしです。(笑)
アンギャル ワインの味わいを引き出す効果はいかがですか。
福田 最も感心したのは〈リーデル・ヴェリタス〉の『オールドワールド・ピノ・ノワール』『ニューワールド・ピノ・ノワール』と、〈パフォーマンス〉の『ピノ・ノワール』を飲み分けてみると、それぞれが大きく違うということでした
アンギャル それは興味深いですね。どう違いを感じましたか?
福田 〈パフォーマンス〉は、香りの立ち上がりが早いことと、ワインのアルコール感をほとんど感じさせませんでした。特に新世界のワインなどはアルコリックなものがあり、スワリングすると香りとともにアルコール感が迫ってくることがあります。先日、黒い果実の印象が強いカリフォルニアの上質なピノ・ノワールで試してみました。〈リーデル・ヴェリタス〉の『オールドワールド・ピノ・ノワール』で味わうと、エレガントでありながらやや重さも感じられ、同『ニューワールド・ピノ・ノワール』では、香りと味わいのバランスが程よく、エレガントさが前面に出てきました。そしてこのワインを〈パフォーマンス〉の『ピノ・ノワール』で味わうと、香りが重層的になり、そしてタンニンはさらに滑らかに感じられ……一言で表すと「華やかで明るい印象」になりました。同じワインでも、グラスによってお色直しができるのですね。
アンギャル おもしろい分析ですね。〈パフォーマンス〉はグラスの内側の表面積が従来のグラスより大きいので、香りや味わいのニュアンスやグラデーションがきめ細やかに表現できるのだと思います。
福田 当店ではオーダーいただいた1本のボトルを、グラスを変えて提供することもありますが、そんな時にもこのグラスを使いたいですね。驚かれると思いますよ。
アンギャル それこそが〈パフォーマンス〉の真骨頂です(笑)。〈パフォーマンス〉は白ワイン用のラインナップも充実し、年内には全7アイテムになる予定です。
福田 今後は白ワイン用も試し、サービスの幅を広げたいと思います。
取材協力「おのでらWINEBAR銀座本店」
「おのでらWINEBAR銀座本店」
住所: 東京都中央区銀座5-14-14サンリット銀座ビルIII6F
TEL: 03-3628-4321
会員制のワインバー。静かで落ち着いた雰囲気ながら華やかさがある。ワインは約200種類あり、フランスワインのリストは圧巻。
福田遼矢氏
今年1月、銀座にオープンした会員制バー「おのでらWINEBAR」のソムリエ。
フレンチレストラン「サンス・エ・サヴール」「カンテサンス」でサービス、ワインを学び、現在に至る。