2017/09/27
Food
もっとワインがおいしくなる!秋の食材を使ったおつまみ
秋に旬をむかえる食材は多く、「食欲の秋」ともいわれます。
そんな旬の食材から、特に和のイメージの強いものを選び、ワインにマリアージュするおつまみをご紹介します。
「秋」の語源
漢字で「秋」と書く、大和言葉の「あき」の語源にはいくつかの説があります。
野山が紅葉で「赤く」染まるからとも、空気が清澄で遠くまで「あきらか」に見渡すことができるからとも、その年の収穫が「あきらか」になるからとも、いわれます。
中でもユニークな説は、食材が豊富で「飽きる」ほど食べることができる季節だから「あき」というもの。
飢餓と隣り合わせだったいしにえの人びとにとっては、夢のような季節に感じられたことでしょう。
里芋でワインのおつまみを
里芋とワインのマリアージュ
秋の行事といえば「お月見」。旧暦八月十五日(太陽暦では九月十五日頃)の満月の晩に月をめでる「中秋の名月」(十五夜)は、秋の収穫期を控えた時期に豊作を祈念する行事でした。
わけてもお団子は、重要な供物。白さや丸さは、円満であることを象徴し、また満月そのものをかたどっています。
一説にお団子は、稲作以前に主食的位置づけにあった芋(現代の里芋に近しいもの)を以て豊作を祈念した風習の名残ともいわれています。つまりお月見とは、そもそもは縄文の昔にさかのぼる、芋の豊作を願う祭だったと考えられます。弥生時代以降、日本人が米を主食とするようになって以後も、収穫祈念祭であるお月見の際は、かつて捧げていた芋の丸い形状をかたどって、米をお団子にしつらえた、というわけです。
ゆえに十五夜のお月見は「芋名月」とも呼ばれ、今でもお団子代わりに、里芋や、小芋を皮ごと茹でたり、蒸したりした「衣かつぎ」を供える地域もあります。
この「衣かつぎ」、熱々のうちに頭の方の皮をちょっと剥き、ちゅるんと吸い出すようにすると、綺麗に口の中へと転がり込みます。
通常は塩や醤油、あるいは味噌などを、剥いた頭につけていただきますが、これをオリーブオイル塩や、バジル風味の利いたジェノヴェーゼソースに変えるだけで、ワインと相性の良いおつまみになります。
軽くガーリックソルトをふり、とろけるチーズを絡めれば、ちょっとしたグラタン感覚。赤ワインにも白ワインにも合いますが、ことにスパークリングワインと熱々の衣かつぎは、絶品の相性です。
柿とワインのマリアージュ
秋の語源が「赤」であるなら、そのイメージにはきっと「柿」も含まれていることでしょう。
砂糖が広まる江戸時代までは、日本人にとって「甘いもの」の代表といえば、柿でした。私たちの先祖は干し柿などを工夫しながら、甘味の保存に取り組んできたのです。
とても日本的な印象の強い柿ですが、意外やイタリアやフランスの人も大好き。ヨーロッパにもパーシモンという柿の木はありますが、どうやら食べる果実は「KAKI」と呼ばれることがもっぱらなようです。
ワインの取材でイタリアのヴァルポリチェッラを訪ねた折、畑道の脇にたわわに実をつけた柿の木があり、思わず日本語で「わ〜、柿だあ!」と呟いたら、「ここでもKAKIというんだ。日本でもそうなの?」と不思議そうに訊かれたことがあります。
イタリアではもっぱら、熟した柿のヘタの方を薙ぎ、スプーンでくり抜きながら、デザートとして食べるとか。
ワインとマリアージュさせるなら、「柿の白和え」はいかがでしょう。
柿は薄切りにし、軽く塩水をさらします。これを、水切りした木綿豆腐にトロトロに擂り下ろした胡桃を加えた白い「ぬた」で和えるだけ。胡桃の擂り下ろしが手に入らない場合は、練り胡麻や甘味の無いピーナッツバターで代用していただいても結構です。
この「柿の白和え」も、赤、白、ロゼ、スパークリングと、ワインとは万能の相性です。
思いのほかワインと相性のよい和の食材
里芋も柿も、とても日本的な食材ですが、案外ワインと相性のよいもの。
こういうおつまみを添えると、お酒を飲む習慣のない方や、ワインをあまり口にしない方の敷居も下がります。
「今まで、晩酌もしなかったし、庭の柿を持て余していたけれど、白和えを覚えてからはサラダにも使えると解って、それからは毎日ワインを飲みながら柿料理を楽しんでいます。」
とおっしゃった、高齢の女性がいらっしゃいました。
「柿の季節が終わったら、もうワインは召し上がらないのですか?」
と訊ねると、
「なにいってるの、次は牡蠣の季節じゃないの。白ワインとのマリアージュが楽しみだわ。」
——と。すっかりワインファンになられたようです。