2017/01/30
Column
キーワードは「真面目」! オーストラリア最古のワイン生産地のひとつ「バロッサヴァレー」の魅力とは?
南オーストラリア州のバロッサヴァレーは、オーストラリア最古といわれるワイン産地のひとつ。地域には1853年に植樹されたという、世界最古といわれるぶどうの古樹もあります。造り手の数は150ともいい、まさにオーストラリアを代表する産地といえるでしょう。
州都アデレードからも近いバロッサでは、赤、白のみならず、ポートなどのフォーティファイドワインまでさまざまなスタイルのワインが造られていますが、それら多様なワインには、共通する「あるキーワード」があります。
すぐれたワインを生み出すバロッサのキーワードとは?
バロッサでのワイン造りの歴史は19世紀中葉、1842年にさかのぼります。
当時ドイツは内戦状態にあり、キリスト教各派が宗教的に対立することも。そうした折柄、敬虔なプロテスタントを信仰する人びとの一派が、ドイツ国内での迫害を逃れてバロッサに移民してきたのです。バロッサの地を目のあたりにした移民たちは、そこが母国ドイツのワイン生産地ライン川流域と似通っていることに気づきました。こうしてバロッサにはぶどうの樹が植えられ、ワイン造りがおこなわれるようになったのです。
「恵まれたテロワール」と「勤勉な造り」の融合で「鬼に金棒」に
真面目さが滲み出る味わい
現在でもバロッサには、敬虔な心を持ち、勤勉で質朴なライフスタイルを尊ぶ住民が数多く存在しています。キリスト教では通常、日曜日は安息日とされていますが、「労働は美徳」と考えるバロッサの人びとは、ぶどうの様子が気になって、日曜もつい畑に出てしまう——というのは、地元の笑い話。19世紀に他国へと逃れたドイツのプロテスタントのうち、バロッサに来なかった一方はスイスに行き、その多くは時計産業を支える職人となったといいますから、その真面目さは筋金入りといえるでしょう。
そうした真面目な心意気は、バロッサのワインの味わいにダイレクトに表現されています。一般的にオーストラリアワインというと、果実味豊かな、力強い印象がありますが、バロッサワインの多くは「ピュアでクリーン」な特徴をそなえています。
品種的特徴が綺麗に顕われた赤ワイン
バロッサヴァレーというと、最初に思い浮かぶのは赤ワインでしょうか。
オーストラリアといえば、シラーズが有名です。リーデルにも、オーストラリアのシラーズに特化した<ヴィノム・エクストリーム シリーズ>の『シラー/シラーズ』グラスがあります。
面白いのは、バロッサヴァレーで育まれたシラーズが、<ヴィノム・エクストリーム シリーズ>の『シラー/シラーズ』グラスと相性が良いのはいうまでもありませんが、試してみると、コート・デュ・ローヌのシラーに特化した<ヴィノムXL シリーズ>の『シラー』グラスに、より寄り添うアイテムも多いということ。とても繊細で、品格のあるスタイルのシラーズが多数あるのです。
バロッサヴァレーのシラーズを飲む際は、ぜひとも、このふたつのグラスのお試しをおすすめします。
こうした傾向はカベルネ・ソーヴィニョンにもあてはまります。バロッサヴァレーでは多くの場合フレンチオーク樽が用いられます。その上品で格調高い味わいは、まるで旧大陸のカベルネ・ソーヴィニョンを髣髴とさせます。
クリアなストラクチャーの白ワインは冷涼なテロワールの賜物
バロッサにはワイン生産地区として、バロッサヴァレーとエデンヴァレーのふたつがあります。より標高の高いエデンヴァレーは近年、秀逸な白ワイン産地として、メキメキ実力をつけてきています。
ことに、ドイツ系のリースリングを用いたワインは秀逸の極み。煌めくように美しい酸味、ぶどうが樹において充分に熟れたことを示す旨味、土壌由来のミネラル感などなど、多彩な味わいの要素が見事なストラクチャーを屹立させます。こちらも、一般的なリースリング用グラスと、ニューワールドに特化した<ヴィノム・エクストリーム シリーズ>の『リースリング』グラスの対比をおすすめいたします。
まだまだ隠し玉もある、魅惑の産地バロッサヴァレー
バロッサの造り手というと、真面目な造りで知られる〈セント・ハレット〉、オーストラリア最大規模を誇りながら丁寧な造りを実践している〈ジィコブス・クリーク〉、オーストラリア屈指の受賞歴を誇る〈ウルフ・ブラス〉、古くから知られる〈ペンフォールド〉などなど、数多くの著名ワイナリーが思い浮かびます。
しかし、バロッサヴァレーの魅力的なワインは、まだまだ多彩。たとえば〈セペルツフィールド〉というワイナリーは、毎年500ℓの樽にポートを保存し、100年後に販売するという遠大なスタイルで知られています。この100年ポートは、ジェイムズ・ハリデー、ロバート・パーカーJR、ニック・ストック、ジャンシス・ロビンソンなど、名だたる批評家が満点をつけた名酒。1800年代後半、この地はフォーティファイドワインの産地として世界的にも有名だったといいますから、産地としてのポテンシャルもまだまだ眠っていそうです。
Author: 高山 宗東