2017/02/17
Wine
豊かな自然に育まれた南アフリカワイン その魅力とは?
インド洋と大西洋にはさまれたアフリカ大陸の最南端に位置する南アフリカ共和国。豊かな自然環境が有名ですが、ここはまたワインを育むテロワールにも恵まれた土地。地の利や気候を活かした南アフリカワインの魅力を、繙いてみましょう。
「知られざるワイン産地」だった南アフリカ
南アフリカには、400年以上のワイン生産の歴史がありながら、近代においては、政治的背景から長らく輸出されない状況が続いていました。
世界市場ではあまり見かけないけれど、南アフリカを訪れた人はワインの美味しさに瞠目する……そんな、知られざるワイン産地だったのです。
南アフリカワインが市場にあらわれるようになったのは1990年代になってからのこと。きっかけは、ネルソン・マンデラ氏の大統領就任でした。
近年では、ミクロクリマの研究も進み、コストパフォーマンスの高い日常消費用ワインばかりでなく、ぞくぞくと高品質のプレミアムワインが造られています。
南アフリカ、注目の産地とぶどう品種
南アフリカワイン産地の中心「西ケープ州」
西ケープ州には、有名な造り手の多いコースタル地域、ケープ半島の先端で冷涼な気候によって繊細な白ワインが生み出されるケープペニンシュラ地域、プレミアムワインの産地として知られるケーブ・サウス・コースト地域、温暖で乾燥したテロワールが優良な果実を育むオリファンツ・リヴァー地域、昼夜寒暖差の大きさと乾燥した気候が特徴で有機的な栽培に取り組む造り手の多いブレード・リヴァー・ヴァレー地域などがあります。
コースタル地域のステレンボシュ地区は、質量ともに南アフリカワイン産業の中心地。恵まれた気候に多彩な土壌が展開し、150以上のワイナリーがひしめきます。ここはまた、テレンボシュ大学に代表されるワイン関係の教育機関や研究所も多く、醸造家の卵が多く集まる土地でもあります。ぶどう品種は、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、カベルネ・フラン、マルベック、プティベルドなど、ボルドー系が多く、アッサンブラージュするボルドータイプのワインが多く造られ、世界的にも高く評価されています。
また、スワートランド地区では、秀逸な白ワイン、赤ワインの他、ポートスタイルのフォーティファイドワインも。この地域らしいワインを文化として守ろうというSwartland Independent Producers(SIP)という団体も結成されています。
この他、フランス系の住民が多いことから美食の聖地として知られるフランシュック地区、複雑に起伏する地理的条件によって多彩なミクロクリマをもつトゥルバッハ地区、近年の成長めざましいウェリントン地区、海からの風と霧によって育まれたぶどうから繊細なワインが造られるダーバンヴィル地区、高品質な白ワインの産地として知られるダーリン地区、コンスタンシア地区などがあります。
この他、西ケープ州には、ケープ半島の先端に位置し、ソーヴィニョン・ブラン、セミヨンなどの産地として知られるケープペニンシュラ地域や、エルギン、ウォーカーベイ、オーヴァーバーグなど多彩な地区を抱えるケーブ・サウス・コースト地域や、コストパフォーマンスに優れたワインの産地として有名なオリファンツ・リヴァー地域、薔薇とワインと競走馬で知られるロバートソン地区、マスカットを用いたデザートワインの産地として有名なクレイン・カルー地区を有するブレード・リヴァー・ヴァレー地域などがあります。
続々とあらわれる新たな産地
この他、北ケープ州では、オレンジ川沿いにおよそ17000ヘクタールにものぼるぶどう畑が展開し、シュナン・ブラン、コロンバール、シャルドネ、マスカット・アレキサンドリア、ミュスカ・ド・フロンティニャンなどの白系品種が多く栽培されていますが、近年では、ピノ・タージュ、シラーズ、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、プティベルド、タナなどの赤系品種も注目されています。
また、クワズール・ナタール州や、東ケープ州、リンポポ州でも、新たにぶどう畑が開拓され、徐々に実力を蓄えつつあります。
ぶどう品種を手がかりに南アフリカを知る
こうしてみると、南アフリカは、そもそもワイン生産地としてのポテンシャルが高かったことが窺えます。しかし、その土地を理解し、気候や土壌と相性の良いぶどうを植える人がいなければ、ワイン産地にはなり得ません。
さまざまな要因を満たして、今、南アフリカはワイン産地としてのポテンシャルを開かせている真っ最中、といえるかもしれません。
そんな状況を窺う手がかりとなるのがぶどう品種です。
南アフリカといえば、この国で独自に開発された赤ワイン用品種ピノ・タージュや、独自の深い味わいとなる白のシュナン・ブラン、フランス南部のコート・デュ・ローヌで多く栽培されているためにローヌ系と呼ばれるシラー(シラーズ)、カリニャン、ムールヴェドールなどが有名です。
まずはこのあたりから、奥深い南アワインの世界を覗いてみてはいかがでしょうか。
Author: 高山 宗東