2015/06/05
Column
【初めてのグラス選び】白ワイングラスは赤ワイン用と兼用できる?
今回のテーマ
白ワイングラスは赤ワイン用と兼用できる?
白ワインにも専用グラスが必要?
「赤ワイン、白ワイン用にグラスを分けて用意する必要があるの?」
こんな疑問を抱く人も多いかもしれない。グラスエデュケイターの吉井大介氏に質問すると、答えは「はい」。
「白ワインは、タンニンがないなど、味わいの構成要素が赤ワインよりも少ないものです。そのため酸味の強弱などを感じやすく、サービス温度の違いが大きく味わいに影響します」
またグラスの容量が小さめだと、こまめにワインを注ぐことになるため、温度変化を受けにくく、適温を保つことができる。「同じ白ワインでもサービス温度が変わると、味わいや香りの印象がずいぶん異なりますからね」
つまり適温で美味しく飲むには、小ぶりの白ワイン用グラスが必要になるというわけだ。
ブドウ品種別で選ぶグラス
「しかし小ぶりのグラスであれば、白ワイン用として万能というわけではありません。香りや酸味の強さなどは、ブドウ品種によって異なります。個々のキャラクターを引き出す道具として、ワイングラスの使い分けが必要なのです」と吉井氏。基本は、白ワインの3大品種リースリング、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネに適したグラスだ。
例えば、グラスの膨らみ部分と口径の差が大きい、口がすぼまった形のグラスは、ワインが口に直線的に素早く入ってくる。爽快な印象が増すため、程よい酸味を持つリースリングなどが向く。一方、ボウルがやや丸みを帯び、膨らみ部分と口径の差が小さく、口径が広めのグラスは、ワインが口中にゆったり広がる。柔らかな酸味のシャルドネ向きだ。また、リースリングとシャルドネの中間に当たる形状がソーヴィニヨン・ブラン向けグラスで、すっきりとした酸やハーブなどの香りも引き立てる。さらに樽熟成させた重厚なワインには、深い香りや豊かな果実感をしっかりと引き出すグラスを選びたい。
このように使い分けることで、白ワインの魅力はいっそう深まるのである。
ワイングラス選びの極意「大は小を兼ねない!」赤と白は分けたい
吉井:今日は、代表的な白ワイン用グラスを用意しました。前回の赤ワイングラスの回で説明したように、ワインのグラスは、品種ごとに使い分けるのが基本です。とはいえ、ワイン好きの方でも赤ワインと白ワインを兼用して使うことも少なくないと聞きます。道具として、白ワイングラスの機能が認知されていないケースが多いのかもしれません。
大越:しかし赤ワイングラスと白ワイングラスの兼用は、避けたいですね。まず、ワイングラスは「大は小を兼ねない」とお伝えしたいです。グラスが大きすぎると、ワインの香りが分散して感じにくくなります。また、冷やしてサービスする白ワインを大ぶりな赤ワイングラスに注ぐと、飲み切るまでに時間がかかり、適温ではなくなることもある。これでは本来の味わいを楽しめませんよね。かといって、小ぶりであればどんな白ワインにも最適、という訳ではありません。
吉井:白ワインはタンニンを含まないなど、赤ワインに比べて味わいの要素が少ないこともあり、サービス温度によって味わいや香りが変化しやすいです。シンプルで繊細な白ワインだからこそ、品種の個性を生かせるグラスを選びたい。特に変化しやすい酸味を例にとると、ワインが口中にどのように入り、喉の奥へどう流れるかで感じ方に違いが出ます。リーデルでは、このようにワインの飲み方が味覚と結び付くことに着目し、グラスの膨らみ部分と口径の差のバリエーションを開発して、各品種のキャラクターを引き出すグラス形状を完成させています。
大越:『リースリング』グラスは、ボウルの膨らみ部分と飲み口の口径差が大きく、すぼまりが強い形状です。スワリングしやすく、ソムリエコンクールなどでも使われるタイプですね。香りや酸味をバランスよく取れ、リースリングの特徴をきれいに引き出してくれます。
次に、ボウル部分に少し丸みのある『ソーヴィニヨン・ブラン』タイプは、柑橘類とグリーンの繊細な香りをきれいに集める工夫が成され、さわやかな酸味が心地いいです。『ヴィオニエ/シャルドネ』は口径が広めで、口中に広くワインが流れることによって、フレッシュな酸味を感じることができます。
吉井:わかりやすいですね(笑)。ソムリエとして活躍した経験も長く、ワインとグラスの関係にも精通している大越さん、きっちり分析していらっしゃる。『ヴィオニエ/シャルドネ』グラスはシャブリなど、樽熟成の要素が少なく、果実味と酸味が主体のシャルドネを想定して開発されたグラスです。実はシャルドネに関しては、樽熟成でボディのある白ワイン向けに、ワイドな口径の大ぶりのグラスもあります。それが『オークド・シャルドネ』グラスです。
樽の効いた白ワインに合わせるなら第2のシャルドネグラスを
大越:シャルドネという品種は強いキャラクターはないのですが、樽熟させることでヴァニラやミツ、香ばしさなどが複雑に加わってボリューミーなワインになります。そうしたワインは、小ぶりの白ワイングラスでは香りのボリューム感を受け止められないので、大ぶりのグラスが必要になりますね。
吉井:このグラスなら口に入るワインの流量も多く、ワインが舌の上でゆったり広がりますので、柔らかな酸味と豊かな果実味が堪能できます。もともと赤ワイン用に開発されたグラスのボウル部分を応用して、飲み口を少し下の方でカットしたものです。やはり、樽のニュアンスがあるワインを想定しているので、ボリューム感をしっかり受け止められる大きさが必要になります。
大越:一方、樽のニュアンスがないシャルドネですと、このグラスでは香りも味わいも輪郭が薄れてしまいます。こうした違いを明確に表現してくれるのが〝道具〞としてのワイングラスの機能なのです。
またソムリエにとって、グラスはワインをより美味しく演出するための力強い武器にもなります。それだけにワイン選び同様、グラス選びも重要なのです。ワイン愛好家にとっても同じですよね。白ワイングラスを使うことで、ワインとの意外な相性を発見できるかもしれませんし、白ワインの本当の魅力に目覚めるかもしれません。
吉井:ワイングラスは、ワインを美味しく味わうための道具だと、私も常々思っています。
大越:道具だからこそ、やはりいいもの、最適なものを選びたくなります。
吉井:まずは赤ワイングラスと同じく、白ワイングラスも品種ごとにそろえることから始めてみてください。
今回の座談で話題になった「ワインとグラスの相性」を体験できる店舗はこちら