2017/06/15
Restaurant
お店の人に一目置かれるアペリティフのオーダー方法
前回は、着席のプロセスについて述べましたが、「脱サラソムリエが本音で語るレストラン利用術」の8回となる今回は、席についてからの、アペリティフ(食前酒)のご注文について書きたいと思います。
お席に案内され着席すると、「アペリティフを何にされますか?」と聞かれるのが一般的だと思います。その際にドリンクメニューを見せてくれるケースもありますが、メニューもなしで聞かれるケースもあります。
この段階は、お客様にとっては嫌な瞬間ではないでしょうか?
なにか、自分のことを試されているような感じがすると思います。逆に、このプロセスをスマートに切りぬけることが、「慣れているお客様」と見なされ、店のスタッフの身が引き締まる瞬間でもあります。
さて、アペリティフを聞かれた時にどうすればよいのでしょうか?ビストロアンバロンでは、おしぼりをお出しした時にお客様にドリンクメニューをお出しし、アペリティフを何にされるかをお聞きしますが、お客様の反応はたいていは以下の2パターンです。
①水
こちらは、三々五々メンバーが集まる時に、「とりあえず水で」という
パターンです。実際4人超のグループの場合、ボトルでのご注文が多くなり、最初のスパークリングワインの選定にあたってもメンバーの総意を得る必要があるため、とりあえずお水というのは理にかなったご注文だと思います。
あとは接待の場合、ホストが先に入店して、お水でお待ちするというのもよくあるパターンです。
②アペリティフ
シャンパーニュ、生ビールの2種類でシェア9割ですが、このほかにも簡単なワイン・カクテルもご用意しておりますので、それをご注文頂くケースもあります。
あとは飲み物は料理に合わせて後で決めるから、まずは食事のメニューを見せて欲しいとご所望されるかたもいらっしゃいます。
さて、この「着席してとりあえずアペリティフ」のプロセスを店側の観点で見てみるとどうなるのでしょうか?
お店の勝手なエゴとしては、まずお客様に何かお出しして一息ついて頂き、そのうえでじっくりとお食事のご説明をして、ご注文を伺いたいという思いがあります。居酒屋でも、着席するかどうかのタイミングで、いきなり「飲み物はどうされますか?」と聞いてきて「とりあえずビール」と注文すると、間もなくビールとお付きだしが運ばれてきますが、フランス料理店でもこれは同じです。
ドリンクメニューに書いてあるものは、グラスワインであれ、カクテルであれ、比較的時間をかけずにすぐにお出し出来るメニューとなっています。逆にメニューなしで、「アペリティフは何になさいますか?」と聞いてくるお店は、「たいていのアペリティフならご用意できます」という自信の表れだと思いますので、自由に注文できますし、変わったアペリティフをご注文されることで、店のスタッフとの話が盛り上がる可能性があります。シャンパーニュとかシェリー、なんかが無難な選択ですが、有名店/高級店などでは、お勧めのオリジナルアペリティフを用意している場合もありますので、それを聞いてみるのも面白いと思います。
あとは注文の仕方ですが、お客様のご要望にお応えするのがお店の仕事であり、お好きなものをご注文頂くのが原則ですが、6人で6種類のアペリティフとなると、ご用意するのにお時間を頂き、結果的にお客様にお待ちいただく時間が増すことになるので、ある程度揃えて注文するのも賢明な方法だと思います。そういう意味でも、日本の「とりあえずビール」は素敵な文化と言えましょう。
ビストロアンバロンの場合、メニューに記載していないものでも、カンパリソーダ、カンパリオレンジ等、簡単に出来るものであればご対応しております。この「メニューに出ていないものを注文する」ことをどう考えるか、ですが、一般的には、注文されない方が賢明だと思います。対応できない場合、「ごめんなさい、申し訳ないのですが、ご用意できません」というネガティブな会話をしなくてはならなくなるのと、対応できたとしても、お店にとってエキストラな負担がかかる可能性があるからです。お客様にとって楽しい時間を過ごすためには、お店とお客様との関係も楽しいものであった方が良いと思います。
あとは、大人数ではなく、数人でのお食事の場合、お水でお待ちになるのも良いのですが、ビールとかシャンパーニュといったアペリティフを召し上がりながらお待ちになる方が、見た目として優雅でカッコイイと思います。あまりお酒の飲めない方、あるいは接待でお客様をお待ちになる場合はともかく、アペリティフは食欲を促進させる効果もありますし、それまでの時間から食事を楽しむ時間への切り替えのスイッチとしての効果もあります。そしてゆったりとした気分になった上で、全員がそろわれた時点でお料理の注文という次のステップに移られるのが、カッコイイと思います。
かつて、所謂デートマニュアル的な本で、フランス料理店で最初のアペリティフにシャンパーニュを頼むと高くつくから、まずは水を頼み、料理を選んでから、料理に合わせてワインを選んだほうが安くあがるという記載を見たことがあります。
金額を低く抑えることが第一目的であれば確かに理にかなっていますが、豊かな時間を過ごしたいということであれば、アペリティフ → 料理の選定 → 食中のワインの選定、という流れがより美しいと思います。
あとは、飲み物は料理に合わせて後で決めるから、まずは食事のメニューを見せて欲しいとのリクエストですが、これは外国人のお客様に割とよくみられるパターンですね。これはこれで「アリ」だと思います。実際お酒を召し上がらないランチの場合、お食事の選定からスタートするわけであり、それと同じですね。ただその場合も、取り合えず、ミネラル・ウォーターをご注文されてからお食事の選定に移られると、流れとしてはより美しいと思います。
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第7回 接待でデキる幹事がおさえておくべき3つのポイント
第6回 上座と下座、どちらに座る? 着席までの美しい振る舞い方
第5回 ご存知でしたか? レストランのキャンセルマナー
第4回 レストランで希望に沿った席を予約するたった一つの方法
第3回 レストラン利用術「スマートなレストランの入り方」