2016/08/19
Column
『神の雫』にも登場したワイン「シャトー・ル・ピュイ」とは?
話題のワイン物語『神の雫』に登場したことで、一躍名前を知られるようになったボルドーの銘醸「シャトー・ル・ピュイ」。
しかし、それ以前から、「真の意味でのテロワールを追求するシャトー」として、知る人ぞ知る存在でした。「哲学」の領域にもおよぶその深淵なワイン造りとは?
代々の当主の哲学が反映する、伝統のテロワール
ボルドー地方、サンテミリオン郊外に屹立する「シャトー・ル・ピュイ」。60ヘクタールの区画には、森林や沼などその土地古来の自然な風景が広がっています。
ぶどう畑はそのうちの38%にすぎません。それは、シャトー・ル・ピュイ代々の当主の哲学のあらわれでもあります。
すべてはナチュラルな味わいのために
代々の当主の試行錯誤が反映
「シャトー・ル・ピュイ」の歴史は1610年にはじまります。日本でいえば、江戸幕府の開闢とほぼ同じ。
この頃、一般的には酸化防止剤の使用などは普通におこなわれていました。ところが、「シャトー・ル・ピュイ」の9代目当主は1868年の時点で、ほとんど常識的に用いられていた酸化防止剤について疑問を抱いていた、といいます。
10代目の当主は、全裸のおじさん達が樽桶で房ごとぶどうを踏みつぶすのが当たり前だった時代に、よりエレガントな果汁を志向して100%除梗を実施。さらには、樽の香りを抑制するために、あえて古樽を用いるなど、代々の当主が重ねて来た試行錯誤は、いずれも「テロワールを純粋に表現したい」という願いによるものです。
「シャトー・ル・ピュイ」が志向するテロワールの表現とは?
ワインの造り手は誰しも、「テロワールを表現したい」といいます。
テロワールとは、そのワインが生まれるすべての要因を指す言葉。言い換えれば、風土そのもの。
しかし、シャトー・ル・ピュイが考える「テロワール」には、さらなる重みがあるようです。
シャトー・ル・ピュイは創業以来400年にもわたり、ナチュラルな造りへの試行錯誤を重ねてきています。ぶどう畑を囲むように叢生する森や沼は、周囲のシャトーからの化学的影響を遮断する効果も考えてのこと。近代的な意味での有機栽培への取り組みは、1934年から。これは、有機という概念を実践した嚆矢といえるでしょう。
なにゆえ、これほどまでに化学薬品の影響を嫌うかといえば、害虫を駆除する薬品はまた、土中の微生物をも激減させてしまうからに他なりません。
シャトー・ル・ピュイの畑には、およそ1立方メートル当たり2億5千万匹の微生物が住み付いているといいます。微生物は葡萄の根に寄生し、樹液を吸い、酸性の唾液を吐き出します。その唾液によって土中のカルシウムが溶け、ミネラル豊かな畑になるのだそうです。化学薬品はその大切な微生物を殺してしまう——なるがゆえの有機栽培。
こうした深みをもつ「テロワール」なのです。
ピュアにして深淵な味わい
「シャトー・ル・ピュイ」では、醸造過程において、補糖、人口酵母の添加、濾過・清澄を一切行いません。それはもちろん、テロワールの賜物であるワインから、極力人工的要素を排除しようというフィロソフィーの現れです。
樽は古樽を用い、その洗浄には蒸気を使用。常識的に使用される二酸硫黄も極力使わず、ピュアにテロワールを表現する味わいを目ざしています。
そうして実現された味わいは、まさしくテロワールの賜物。
シャトー・ル・ピュイには、いくつかのアイテムがありますが、それらのいずれにも、ピュアで、奥深く、多彩なアロマが次々と顔を覗かせることが共通しています。
秀逸なワインをひもとく、グラスの力
シャトー・ル・ピュイのような多層性を秘めたワインは、是非ともリーデルのボルドーグラスで飲んでいただきたいものです。
リーデルのボルドー赤ワイン対応グラスは、
<ソムリエ シリーズ>の『ボルドー・グラン・クリュ』
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<ソムリエ ブラック・タイ シリーズ>の『ボルドー・グラン・クリュ』
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<ヴィティス シリーズ>の『カベルネ』
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<リーデル・ヴェリタス シリーズ>のカベルネ・ソーヴィニヨン』
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<ヴィノム シリーズ>の『カベルネ・ソーヴィニヨン(ボルドー)』
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<ワイン シリーズ>の『カベルネ/メルロ』
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<リーデル・オー シリーズ>の『カベルネ/メルロ』
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などがありますが、どれもゆるやかなすぼまりをもつ大きなボウルが特徴です。
このかたちには、複雑で芳醇な香りを解きほぐす効果があります。また大きな径はワインをゆっくりと舌の横へと広げ、厚みあるボディと心地よい渋味が、存分に堪能できる構造になっています。
とっておきの日、適したグラスを用いて、素晴らしいワインをひもといてみてはいかがでしょうか?
Author: 高山 宗東