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2017/08/31

Restaurant

お店とWin-Winの関係を構築できるVIP 客になるために

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「脱サラソムリエが本音で語るレストラン利用術」の10回となる今回は、メニューの選択について書きたいと思います。

今回は、炎上の可能性の高い問題含みの内容となりますが、このポイントをおさえておくことが、より良いレストランとの関係構築、ひいてはレストランにとっての「ソワニエ」となり、より良いサービス、より美味しい料理を食べるチャンスにつながるポイントです。

「ソワニエ」という言葉は聞きなれない用語かと思いますが、これはフランス料理業界用語で、いわゆる「たにまち」、「VIP客」に相当する方に対する呼称です。どういう方がソワニエとみなされるかは、色々な基準があり、それこそグルメ雑誌で「ソワニエになるには?」といった特集記事も取り上げられてしております。この連載記事も「ソワニエになるためのノウハウ」といってもいいかもしれません。

ソワニエの定義は色々とありますが、私自身は「お店の努力を正しく評価してくださるお客様」だと思っています。フランス料理、フランスの文化を良くご存じで、お店が努力している細かい点にまで目が行き届き、評価して下さる方です。裏を返せば、非常に厳しい視点をお持ちの方とも言えます。そのうえで、お店を暖かく応援して下さる方でもあります。ご自身の来店頻度が高いだけではなく、色々なお客様をお連れになってご紹介頂ける方もそうです。また、料理、ワイン等のお店の独自性についても理解してくださる方も素敵です。俗な言い方をすれば、お店に対して売上において貢献する方ではありますが、売り上げの質が素敵な方です。

たとえば、お店に入って、横柄な態度で「一番高いワイン!」と頼む方は、決してソワニエとはみなされないでしょう。あとは、ご自身のわがままを突き通す方も同様です。お店とお客様がWin-Winの素敵な関係を構築できる方、そんな方がソワニエと言われるお客様だと思います。逆に、お客様の立場としてソワニエとみなされるには、お店に対する愛情表現を全面に出して接することが、ソワニエへの近道だと思います。

さて、だいぶ上から目線の内容で炎上気味になってきたところで、本題のメニューの選択に移りましょう。

手渡されたメニューを目にして何を選ぶかは、まさに「目移り」して楽しいプロセスですが、同時に大変な作業でもあります。さらに、その料理にどのようなワインを合わせるか、となるとそれこそ無限大の組み合わせがあり、悩ましいところです。しかも、フランス料理のメニューには、聞きなれない、よくわからない言葉が羅列しており、ますます悩みは深くなります。そんな時にお客様がよく口にするのは、「お勧めは何ですか?」という言葉です。

レストラン店主としては、「メニューに記載している料理はすべてが自信をもってお勧めできる料理であり、ご自身が食べたいものを召し上がってください」と思います。メニューを選ぶプロセスが、レストラン訪問の楽しみの一つであり、料理の流れ、それに合わせるワインを考えるプロセスこそが食事の醍醐味ですが、なかなかそうは思って頂けないのが現実のようです。多くのお客様のおっしゃる「お勧めは何ですか?」という言葉の本当の意味は「何を選んだらいいのかわからないので、あなたが勧めてください」ということのようです。

そんな時、ビストロアンバロンでは、お客様に

① 「大食いですか、小食ですか?」
② 今日の気分はガッツリですか、さっぱりですか?
③ デザートは召し上がりますか、なしですか?
④ ワインはどのくらい召し上がりますか?

とお聞きして、こちらからメニューをご提案し、さらにワインも飲むペースに合わせて色々グラスでご提供したりしております。

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さて、一般的なレストランにおいては、私が思うに、世の中の「お勧め」には2種類あります。

(A)お客様のお好み、過去の召し上がった食事の履歴を把握した上での、そのお客様の好みに合うであろう「お勧め」

もうひとつが、お客様にとってはショッキングなことだと思いますが、

(B)賞味期限が近くて、ロスを防ぐために、売り切ってしまいたい料理

です。

ちなみに、誤解がないように書きますが、あくまで賞味期限が近いだけで品質にも味にも全く問題が無い商品です。お店としては、ロスが出てしまうと、結果的に原価が上がってしまうので、上手くご提供することが経営上の課題です。

お客様が「お勧め」を聞く時は、潜在的には、「何を選んだらいいのかわからないので、あなたが勧めてください」なのですが、ご本人の意図としては、(A)の意味のはずです。でも、一見さんの場合お店としてもお好みがわからないので、本当の意味での「お勧め」をすることは難しく、先述のような形でお好みを探りつつ、お口に合いそうなもの、季節感のあるもの、一般的に人気な商品をお勧めしております。

逆に、常連さんならお店として食べて感動してもらいたい商品がありますから、それをお勧めすることになります。

かつて友人が「レストランのお勧め商品は聞いたうえで、絶対にそれは選ばない」と言っていました。彼は当時証券会社に勤めていて、適合性の原則に鑑みて、お客様に売るべきではない商品も会社方針で「お勧め」として売らなくてはいけなかった苦い経験があり、その裏返しで、「お勧めは選ばない」という方針だったのでしょう。

さて、以上を踏まえると、メニューを選ぶ際のポイントは

① 自分の食べたいものを選ぶ。そのためには料理に関する知識を養うことも大切。
② 同じお店に通って信頼関係を構築し、自分の好みを理解してもらい、色々提案してもらう。

ということになるのですが、実は敢えて

③ 「お店のお勧めを食べる」。

という裏ワザもあります。これは、ある方がブログに書かれていたのですが、先述の(B)、つまり賞味期限が近くて、ロスを防ぐために、売り切ってしまいたい料理であることを承知の上で「お勧め」を食べるというのです。この方の主旨は、お店と対等な関係を構築していく上で、お店が困っている時には助ける。だから、味には何ら問題がないけど、賞味期限が近い「お勧め」を食べるのだ、というのです。そういう関係があれば、新作の試作品の味見をさせてもらったり、通常のお客さまが経験できない、プラスのサービスを受けることもあるのだそうです。

最後に、ビストロアンバロンではどうしているか?となりますが、ビストロアンバロンのメニュー構成は、定番メニューと日替わりの「本日のスペシャル」の2部構成となっております。「本日のスペシャル」であって、「本日のお勧め」ではないのは、今まで記載してきたことが理由です。当然ながらその日その日にシェフから売り切って欲しい料理が上がりますが、それについては無理やり売るのではなく、お客様とのコミュニケーションを通して、料理の流れを作っていく中で入れて行くようにしております。経営者として、お店の運営を考えて行く際にもっとも重要なことは、ロスを出さないことではなく、「お客様の満足度を最大限に高めてお店を出て行ってもらう」ことであり、したがって、お料理は召し上がりたいものを注文して頂きたいと思っています。

肉食女子の方には、肉オンリーで攻めて頂くのが最高の喜びにつながるでしょうし、色々召し上がりたい方には、食材、味の濃淡、ワインとの相性を考えてご提案していきます。

「脱サラソムリエが本音で語るレストラン利用術」の過去記事はこちら
第9回 ドリンクの値段を聞くのは野暮なこと?
第8回 お店の人に一目置かれるアペリティフのオーダー方法
第7回 接待でデキる幹事がおさえておくべき3つのポイント
第6回 上座と下座、どちらに座る? 着席までの美しい振る舞い方
第5回 ご存知でしたか? レストランのキャンセルマナー

ビストロ アンバロン(BISTRO EN BALLON)

〒106-0031
東京都港区西麻布1-9-7

TEL:03-6438-9699
http://bistroenballon.com/

  • 両角 太郎bistroenballon
  • ビストロアンバロン オーナー

金融業界21年間のサラリーマン時代の食べ手としての経験を生かし、「自分が最も通いたい店」として2009年12月にビストロアンバロンを開店。ミシュランガイド「ボンヌ・プティット・ターブル」にて赤フォークとビブマークの両方の評価を得ている西麻布のフレンチビストロ。
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