2016/09/16
Column
ワインは健康に良い!? ポリフェノールと美食の不思議な関係「フレンチパラドックス」とは?
一般的に、「動物性脂肪を多く接種する食生活を続けると、心筋梗塞のリスクが高まる」といわれます。ところが、動物性脂肪を多く接種しているはずのフランスでは、心筋梗塞になる人が少ないというパラドックスがあります。
一説に、その謎を解く鍵がワインなのだとか。思わずワインを飲み過ぎてしまいそうな学説「フレンチパラドックス」とは?
ワインがもたらす健康効果
1989年、世界保健機構(WHO)のMONICAによって、奇妙な報告がなされました。MONICAは、世界規模で狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の調査をおこなうプロジェクト。この調査の結果、アジアに比べ、動物性脂肪を多く接種する食習慣のある欧米において冠動脈疾患による死亡率が高いことが指摘されました。この報告に、別段奇妙な点はありません。
奇妙なのは、ここからです。欧米諸国の中でも、指折りに動物性脂肪を接種しているはずのフランスのみ、この傾向が当てはまらなかった、というのです。
ポリフェノールが脂肪燃焼の鍵
冠状動脈性心臓疾患の敵――飽和脂肪酸と喫煙
動物性脂肪には、飽和脂肪酸が多く含まれています。通常、飽和脂肪酸を多く接種する食生活を続けると、冠状動脈性心臓病に罹りやすい……といわれています。
動物性脂肪の多い食事を食べた後は、血液中の脂肪分量が多くなります。こうした食習慣を続けると、血管の壁に脂肪分がこびりつき、血流が悪くなり、結果、心疾患を引き起こしやすくなる、というわけです。
また、喫煙も冠状動脈性心臓病のリスクを高めるといわれています。
フランス人は、欧米諸国の中でも肉類の摂取量が多く、チーズやバターなどもたくさん使用し、かつ喫煙率も高いにもかかわらず、動脈硬化患者の比率が少なく、心臓病の死亡率も低い——これはまさに「謎」といえるでしょう。
いくつかの条件を満たしたうえで……
このパラドックスを解く鍵が、フランス人が好む赤ワインである、という説があります。
赤ワインに含まれるポリフェノール、その中でも特に「レスベラトロール」という成分に、動脈硬化や脳梗塞を防ぐ抗酸化作用があるため、フランス人は食事中にワインを飲むことで、飽和脂肪酸の影響を相殺してしまっている、というのです。ワインを飲むだけで血中脂肪の燃焼が促され、新たに脂肪細胞が作られるのを遅らせる効果もあるというのですから、夢のような話です。
もちろん、飲み過ぎは禁物。かつ、習慣的に食事とともに接種すること、などの条件が重なりますが……
夢の取り合わせ、和食とワイン
一方で、「フランスにおける心臓病の発生率は、統計上過小評価されている可能性がある」という指摘もあり、飽和脂肪酸の消費と冠動脈心疾患リスクとの間には、因果関係を確立する充分な証拠はない、とする説もあります。
実際のところ、その因果関係はまだまだ研究段階にあるようです。
とはいえ、美味しいワインを飲みながら楽しく食事をすることが、心身の健康に良い影響を与えないはずがありません。
また、動物性脂肪を抑制した食生活を実践していれば、「効き目」ばかりを気にせずに、純粋にワインの美味しさが楽しめるというもの。
たとえば和食は、脂肪分が少なく、食物繊維多めの理想的スタイル。日本でふつうにおこなわれている和食とワインのマリアージュにこそ、健康への鍵が秘められているのかもしれません。
Author: 高山 宗東