10種のワイングラスで一つ上を行くおもてなしを
銀座の中心に、パリの2ツ星シェフ監修のフレンチが上陸した。ガストロノミーレストラン「ティエリー・マルクス」だ。
伝統と革新を融合させた料理を堪能できるくつろぎの空間には、最上のおもてなしがある。
おもてなしの空間作り
2016年9月24日、銀座の和光本店を正面に望む絶好のロケーションに「ティエリー・マルクス」がオープンした。ここは、パリで2ツ星に輝くフレンチレストランの総料理長ティエリー・マルクス氏が監修するレストランで、日本初上陸となる。
マルクス氏は、もともとブーランジェリー(パン屋)で働いていたことがきっかけで料理人を目指した人物。言うまでもなく料理の評価も高いが、特に美味しいパンや、オリジナルのブリオッシュの提供でも支持されている。
フランスの食におけるパンの重要性を認識しているシェフだからだろう、レストランには、料理にとどまらず食事全体を考えた空間を提供したいという哲学が表れている。
「当店のフィロソフィーは“トラディションとイノベーション”です。伝統的な料理を継承しながら新しい技術を融合させたり、旬の食材を使いながら伝統的かつ新しい料理へと昇華させたりしています。例えば、スペシャリテの『貝のジュレとクリーム、キャビア』や、お米を使わない『もやしのリゾット』などは、伝統の中に革新性があります」と、シェフソムリエの谷川雄作氏。
谷川氏は美味しい料理の提供はもちろん、このレストランでは他のグランメゾンとは違う“くつろげるサービス”を心掛けているという。
「細やかな心遣いが評価されるグランメゾンのサービスですが、当店ではさらに上をいくプラスアルファのおもてなしに取り組んでいます。ポイントはお客さまとの距離感。“着かず離れず”です。お客さまによっては、料理やワインのことを細かく求める方もいれば、反対にサービスマンの存在感は必要最低限でいいという方もいます。そうしたお客さまの要望をさりげなく察して、それぞれに寄り添うサービスを提供していこうと取り組んでいます」
オフホワイトをベースにしたモダンでシンプルな店内は、全32席で個室もある。ガラス越しにキッチンが眺められるテーブル席は、レストランでありながら友人の家に招かれたようなアットホームな雰囲気が演出され、やさしく気持ちをほぐしてくれる。こうした上質な空間作りも、谷川氏が目指すおもてなしなのだ。
カスタマーファーストの精神
「料理をはじめワインやカトラリーからワイングラスまで、サービスに関するすべてがお客さまを最優先に考えた“カスタマーファースト”に徹しています。
ワインに関しては、フランスをはじめイタリア、スペイン、ギリシア、レバノン、カリフォルニア、オーストラリアのほか、日本のワインもご用意しています。アイテム数は約300、店内のストック数は600本以上あります」
お客さまの要望に最大限応えるために、在庫リスクを恐れずに多くの国のワインをそろえている。ワイングラスについては10種類も用意し、使いわけるという。
「料理とワインの相性があるように、ワインとグラスの相性も重要です。そのため大ぶりのグラン・クリュタイプやブドウ品種別にラインナップがそろうリーデルのワイングラスを選びました」と谷川氏。ブドウの個性を引き出し、ワインの魅力を広げてくれる最適なワイングラスを用意することも“一つ上をいくサービス”であるという。そのため、レストランで提供するワインは、あらかじめ大きさや形状の異なるリーデルグラスで試飲し、ベストな組み合わせで提供することにもこだわっている。
「ワインの魅力を深く引き出すリーデルのワイングラスを使うのは、お客さまへの利点ばかりではありません。お店側にとってもメリットがあります。
例えばエレガントな『リーデル・ヴェリタス』シリーズはステムが長く、飲み口部分は薄く作られている反面、耐久性に優れています。他社の薄いグラスも使ってきましたが、これ程ハードな使用に耐えるグラスはなかったですね。260年の歴史を持つメーカーだからこその製品、使いやすさと耐久性を併せ持つ、理想的なグラスです。グラスの破損にあまり気を使わなくてよくなり、肩の荷が下りました」
ティエリー・マルクスでは創造性に富んだ料理と、お店の空間作り、ワインの品ぞろえ、すべてのサービスにおいてお客さまを心からもてなそうという姿勢が強く感じられる。
テーブルに案内された時、安堵感にも通じる心地よさがあるのもこの店ならではだろう。その理由を探すとすれば、シェフやスタッフの所作を含め、食事をする空間の隅々にまでお客さまをもてなす精神が溢れているからに違いない。